弱い力学的,熱力学的要因によって引き起こされる質量や熱の流れが相互作用することで生じる非線形現象を調べています.

例えば,物体が流体の中を並進運動するとき,物体には力(抵抗や揚力)が働くことはよく知られています.ところが球が無限に広がった流体中を並進運動する場合のように系にある種の対称性を課すと,物体の並進運動によって抵抗は働きますが,揚力は働きません.これは対称性によって並進運動に対する応答の一つが凍結してしているとみなすことができます.同じようなに例えば無限に広がった流体中で球が回転する場合には,抵抗や揚力は働かず,球にはトルクのみが働きます.では球が並進運動と回転運動を同時に行う場合はどうでしょうか.この場合には,回転運動によって対称性が崩されるので,球には揚力が働きます.この効果はマグナス効果と呼ばれていますが,並進に対する応答である抵抗や回転に対する応答であるトルクと異なり,並進と回転の両方の効果に対する非線形応答となります.同種の非線形相互作用による効果は例えば,流体中を並進運動する球の温度が周囲流体の温度と異なる温度に保たれるとき抵抗に現れます.

ここで述べた球の例の場合,揚力には対応する線形応答が存在しないので非線形応答が現象を決める主要項となります.一般には非線形相互作用を直接求めることは線形問題を解くのに比べ圧倒的に難しくなりますが,外的要因の強さが小さい場合には,これをうまく利用することで対応する線形問題の解をかけ合わせて非線形相互作用を調べることができます.これにより非平衡気体中のマグナス力を計算することができます.